葬儀会社の怖い話

誰もいない式場に閉じ込められて、朝まで脅かされたり、

式場に相談に訪れた老人が翌日担当するお葬式の遺影写真のその人だったり、

火葬炉の中から叫び声が聞こえたり、

火葬が終わったらご遺骨が明らかに二人分出てきたり、

といった恐怖体験はしたことがありません。

ご遺体しかいない安置室の内側から扉を叩く音が聞こえたとか、

自分しかいないはずの式場なのに上階にエレベーターが呼ばれて上がっていったとか、

誰もいない上の階から駆け足のような足音が聞こえてきたとか、

自動ドアが何十回と小刻みに開閉を繰り返したとか、

手動ドアがひとりでに開いたとか、

安置室の窓から外を見ている人影が見えたとか、

寺院控室が整備中だったのでその日だけは安置室を寺院控室として利用したら初めて来たお坊さんが部屋に入るのを頑なに拒んだとか、

掃除に入ると必ず肩が凝る安置室があるとか、

ご遺体が式場に入ることを察知するベテランスタッフがいるとか、

どんなに大雨でも出棺の瞬間だけは雨を止ませるベテランスタッフがいるとか、

電話番になると依頼の電話が鳴り止まない、「死神」の二つ名を持つベテランスタッフがいるとか、

お焼香への誘導に誰もいないところへ声掛けに行った新人スタッフがいるとか、

せいぜいその程度です。

残念ながらご期待に添えられるような心霊体験は今まで一度もありません。

葬儀会社で働いていると、生きている人間の方が怖いなぁ、と改めて思います。

朝、出社すると、式場が血だらけになっていたことがあります。

通夜の後、酒の勢いもあり兄弟喧嘩が勃発したのだそうです。

怖いのは生きている人間です。

別れた元妻と内縁の妻がお骨の奪い合いを始めたこともあります。

一族から蔑ろにされ、いないところでは散々に陰口を叩かれている後妻さんを目の当たりにしたこともあります。

自殺で亡くなった方に、遺族が生前相談をしていた履歴が残っていたこともあります。

やはり、怖いのは生きている人間です。

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