当たり前ですがお客様の名前は絶対に間違えてはいけません。
大切な故人様の名前を間違えるのはもっての他ですが、式典中に故人様と間違えて喪主様の名前を呼ぶというのは、葬儀業界ではありがちな失敗談です。
おそらく全ての葬祭ディレクターが各々のやり方で読み間違えないように対策をしていることと思います。
私はといえば、書いて頭に叩き込みます。
書き間違えたらどうする?と言われそうですが、私は今までこのやり方で読み間違えずにやってきているので、今さらどうこう言われても変えるつもりはありません。
大事なのは、名前を間違えるという絶対に失敗してはいけないことは、絶対に失敗しない方法で対策をしているということです。
実際、読み間違いはそうそう起こしません。
起こしやすいのは、看板や生花の名札などの漢字の見間違いと変換間違い、そして知らない漢字や誤って覚えていることによる間違いです。
見間違いは、
「崎・﨑」「濱・濵」「恵・惠」「高・髙」
などの異体字や、
「菊池・菊地」「礒野・磯野」「健治・建治」「裕子・祐子」
などの同じ読みで似ている漢字を誤って認識してしまうことです。
変換間違いは、
「安部・阿部」「川村・河村」「貴史・貴司」「美恵・美江」など、パソコンなどの予測変換で、最初に出てくる文字や有名人の名前など、よりポピュラーな方を入力しがちになることです。
知らない漢字とは、例えば「わたなべ」の「なべ」です。
あなたは「辺」の異体字が50種類以上あることを知っていますか?
「邉」と「邊」は有名なところですが、それぞれ一点しんにょう、2点しんにょうがあります。
「自」が「白」の場合があり、その下の「冖」と繋がっている場合、「冖」が「宀」の場合、「冖」の下が「八」の場合と「儿」の場合、そしてその下が「口」の場合と「方」の場合、つまり、それぞれのパーツが自由な組み合わせで成り立つのが「なべ」なのです。
ちなみに、「辺」も2しんにょうバージョンや「刀」が「力」になっているバージョンがあります。
由来としては、本家や分家との区別のために意図的に少しずつ漢字の字体を変えていったとする説や、単に書き間違えたり伝え間違えたまま登録されてしまったとする説があります。
バリエーションの多い漢字や部首は他にもいくつもあります。
例えば「衤」ではなく「礻」の「初」があったり、草冠には「艹」「艹」などの亜種が存在します。
誤って覚えていることによる間違いとは、
「辻」「濱」「廣」などです。
「辻」は一点しんにょうで覚えている方が多いのではないでしょうか?
(一点しんにょうの辻もあります)
「濱」は「氵」に「賓」ではありません。
(「氵」に「賓」の濱もあります)
「廣」の中は「黄」ではありません。
(中が「黄」の「廣」もあります)
実際のところ、そこまで気にされている方のほうが珍しいですし、戸籍上の漢字を知らないまま亡くなられる方も多いです。
ですが、喪主が書く死亡届けと主治医が書く死亡診断書の故人名に相違があると、書き直しが必要になります。
主治医の間違いだと、病院まで書き直してもらいに出向かなければならないですし、週末などで主治医と連絡が取れなければ、死亡届の提出が遅れ、最悪の場合、お葬式の日程変更を余儀なくされます。
やはり、名前には最新の注意が必要です。
最後に、変体仮名というものがあります。
現在は使われていない昔のひらがなを変体仮名といい、ご年配の方のお名前でたまにお見かけします。
まさしく、古文書でしか見ないような文字で、これには白旗をあげざるを得ません。