霊柩車

はじめに、霊柩車は一般貨物自動車運送事業の許可を得た者が遺体を運ぶために使用する車です。

霊柩車は普通免許で運転できます

旅客を乗せて車両を運行する場合には第二種免許が必要ですが、ご遺体は「旅客=人」ではなく、「貨物=物」として区分されるため、第一種免許で運転は可能ですし、霊柩車はクラウンやレクサス、リンカーンなどの普通車を改造して作られているので、いわゆる普通免許で運転が可能です。

(霊柩車はご遺体を運ぶことで運賃を得ており、通常は喪主や親族が同乗される際に運賃を取らないので、第二種免許は必要としません)

普通免許で運転できる霊柩車ですが、ご遺体を大切に送り届けるために急発進や急停止は厳禁であり、火葬場へは時間通りに到着しなければなりませんが、当然、制限速度は守らなければなりません。

また、参列者を乗せて霊柩車と供に火葬場へと向かう車を供車(ともしゃ、ともぐるま)と言いますが、火葬場によっては供車以外の入場を規制しているため、供車を途切れさせてはいけません。

霊柩車には、ご遺体だけではなくご遺族も同乗されることが多く、葬儀関連の質問をされることもあるため、知識も必要です。

また、重ね言葉や忌み言葉なども使わないように気を付けなければなりません。

車道の信号が青から赤に変わるタイミングが予知できれば、供車がはぐれることも急停止もなくなります。

優秀な霊柩乗務員は、式場と火葬場の間にある全ての信号機の変わるタイミングを把握しています。

というのは嘘です。

どんなに優秀な霊柩乗務員も、交通状況によって変動する信号機の変わるタイミングを把握することはできません。

実は、車道の信号が青から赤に変わるタイミングを予知する方法があります。

それは、“同じ進行方向の横断歩道の信号を見る”ことです。

多くの信号は、歩行者を先に止めるために横断歩道の信号が先に赤に変わります。

つまり、横断歩道と車道の信号は、

1、横断歩道の信号が点滅をする

2、横断歩道の信号が赤になる

3、車道の信号が黄色になる

4、車道の信号が赤になる

の順に変わります。

横断歩道の信号が点滅を始めたら、そろそろ車道の信号も青から赤になる、という判断が出来るわけです。

中には押しボタン式や歩車分離式の信号もありますが、そういった信号さえ把握しておけば、安全にご遺体と供車を火葬場へと送り届けることができるわけです。

霊柩車が通行してはいけない道があります

葬儀式場が建設される際に火葬場への出棺ルートも決められます。

基本的には、式場から火葬場までの最短ルートではなく、信号の少ない、渋滞の少ない、右左折の少ない、供車が途切れにくいルートが選ばれます。

また、火葬場付近ではこの道路を通るように、と取り決めがされている場合があります。

火葬場の建設は、地元の方にとってはあまり気持ちの良いものではありません。

毎日霊柩車を見たくないという地元の要請を受け、火葬場建設の際にルートも選定される、というわけです。

同様に葬儀式場付近も、自治体や町内会、近隣住民との取り決めにより、ルートの選定がされます。

具体的には、老人ホームや介護施設の隣接する道路、神事に利用される道路、渋滞や事故が多発する道路などは、通行が禁止されることがあります。

昔から火葬場からの帰り道は、亡くなった人の魂が付いて帰って来てしまう事がないようにするため、行きとルートを変えた方が良いとされています。

霊柩乗務員は火葬場からの帰り道、敢えてジグザグに進んだり信号が赤に変わる直前でスピードを上げて強引に渡ったりUターンを仕掛けてみたりと、追いかけてくる死霊から逃げるように、気持ち急ぎ気味で帰路に着きます。

なんてことはありません。

葬儀会社で働く者は皆、故人が悪さをしないことを知っています。

行きと帰りで同じ道を通らないというのは、故人様がこの世との縁を断ち切るために行われる昔からの風習ですが、近年ではあまり行われなくなりました。

霊柩車も普通にガソリンスタンドで給油します

最近は街中で霊柩車を見かけることが少なくなりました。

自宅でのお葬式が少なくなったことで、霊柩車は決まったルートしか通らなくなったことも理由の一つですが、何より宮型(みやがた)霊柩車が減ったことで霊柩車の存在に気付かなくなったことが一番の理由です。

宮型霊柩車とは、お寺の仏壇のような派手な装飾を施した、見かけたら親指を隠すように、と小さい頃に教えられたあの霊柩車のことです。

宮型霊柩車が減った背景には、お葬式の簡素化やお葬式を近隣に知られたくないという価値観の変化による需要の減少があります。

また、新設の火葬場では近隣住民に配慮し宮型霊柩車の乗り入れを禁止しているところもあります。

現在では、レクサスやクラウンなどの高級車をリムジンのように改造した、一見して霊柩車とは気付きにくい見た目になった洋型霊柩車が主流となっています。

アルファードやセレナなど、外装には一切手を加えないバン型霊柩車も登場しています。

そんな気付かれにくくなった近年の霊柩車ですが、燃料が減れば普通にガソリンスタンドで給油をします。

途中コンビニに寄って買い物をしたいときは、駐車場が広めのコンビニを選びます。

昼食を取りに吉野家に行くこともあります。

割合的に居合わせる確率は少ないですが、街中で霊柩車を見かけた際には、親指を隠さずに気軽に声をかけてやってください。

ちなみに私の経験ですが、霊柩乗務中に親指を隠した小学生を見たことは一度もありません。

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