いよいよ、生前相談の実践です。
ここで、葬儀代金の内訳を簡単に説明します。
葬儀代金は、
①基本の葬儀プラン
②追加オプション
③参列者への返礼品や食事などの変動費
で構成されます。
お葬式をあげるのにかかる費用のうち、最低限必要なものがあります。
搬送…死亡地から安置場所、安置場所から火葬場へのご遺体移動にかかる費用、葬儀会社により10kmや20kmなどの範囲で基本プランに含まれるが、車種や距離により増減。
ご遺体の処置…お体の腐敗を防ぐためのドライアイスや布団など、お体の状態や安置する日数により増減。
棺…火葬するためには、棺にお入りいただく必要があり、棺の材質により増減。
骨壺…火葬後のお骨を納める壺、サイズや装丁により増減。
後飾り祭壇…骨壺などをお祀りする祭壇、線香やろうそくなども含む。
役所・火葬手続き代行…死亡届の提出と火葬許可証の発行・火葬場の予約など、多くの葬儀会社が無料で行います。
これらは、おそらくどの葬儀会社でも、基本の葬儀プランに含まれています。
①基本の葬儀プランとは、葬儀会社により名称や中身に若干の違いはありますが、以下の種類があります。
直葬プラン…10万円~15万円ほど。
故人を弔うための必要最低限のプラン。
火葬場で故人様と待ち合わせて、炉に入る直前に、お棺の窓越しから最後のお別れをしていただくプランです。
火葬式プラン…15万円~20万円ほど。
自宅や安置施設でお花入れなどのお別れをするプラン。
祭壇がないため、宗教者を呼ぶことができないプランです。
また、参列数の制限がかけられる場合があります。
一日葬プラン…30万円~40万円ほど。
式場を使ってお通夜をしないお葬式のみのプラン。
二日葬プラン…40万円~。
通夜・葬儀を行うプラン。
葬儀会社により、家族葬プランと一般葬プランの区別があったり、以下に説明する追加オプションが予め付帯している高グレードのプランをいくつも用意している葬儀会社もあります。
②追加オプションとは、基本の葬儀プランに、棺だけは豪華にしたい、などの個別の要求に答えるものです。
以下に列挙します。
生花のボリューム
湯灌(ゆかん)やエンバーミングなど納棺のグレードアップ
死装束の刺繍などによるグレードアップ
棺のサイズや材質、装丁によるグレードアップ
骨箱のサイズや装丁によるグレードアップ
遺影写真の額の装丁によるグレードアップ
霊柩車のグレードアップ
火葬場へのハイヤーやマイクロバス
宗教や宗派により個別に必要とする道具
他、プロ司会や写真撮影、生演奏など葬儀会社によりオリジナルの追加オプションがあります。
また、直葬プランでも、生花を追加オプションで頼めば故人様の枕元にお花を添えることができます。
火葬式プランでも式場使用料を支払うことで、参列の人数を増やすことができたり、一日葬プランでも追加オプションによって前日から故人様に付き添うことができるようになります。
③の返礼品や料理は参列の人数によって変動しますが、もちろん選ぶ品物によっても変動します。
①葬儀プランと②追加オプションは生前相談で確定できますが、③の変動費は、当日の参列人数を把握することは困難だと思われるので、生前相談時には確定できない部分です。
また、基本プランを超える距離の搬送費やご遺体の処置にかかる費用も、③の変動費同様、生前相談では確定できない要素になります。
生前相談に行く前に
上記のように、葬儀代金は①基本プランと②追加オプションの組み合わせで際限なく加算されていきます。
また、聞き慣れない商品ばかりで、判断が難しい物も多いでしょう。
予備知識0の状態で生前相談に臨んでも、その場で具体的な見積もりを提示してもらうことは困難です。
かといって、実際に商品を見る前に追加オプションの細部まで把握することは不可能でしょう。
生前相談に赴く前に、最低限の準備として、ある程度の予算は決めておくべきです。
ただ、例えば予算を80万円と決めて生前相談に臨んだとしても、基本プラン20万円の火葬式にオプションをあれもこれも勧められて総額80万円になってしまえば、そこにはきっと不要なオプションが含まれているはずです。
これでは意味がありません。
80万円あれば通夜と葬儀をしっかり行うことができるのですから。
火葬式にするのか、通夜と葬儀をしっかり行うのか、プランは決めてから赴くべきです。
ですので、葬儀会社への生前相談に行く前に、ご家族やご本人と相談し、予算とプランだけは予め決めておきましょう。
資料請求できる葬儀会社があれば、手元にパンフレットを取り寄せても良いです。
※二日葬以外のプランを選ぶ際の注意点として、先祖のお墓が寺院内にあったり、毎年お盆の時期にはお坊さんがお経を唱えに来ているなど、特定の宗教者との付き合いがある時には、その宗教者にお伺いを立てておくべきです。
お通夜をしない葬儀に反対する宗教者は多くいます。
火葬式でも、火葬場で宗教者と待ち合わせてお経を唱えてもらうことはできます。
そして、それを容認してくれる宗教者もいます。
付き合いのある宗教者と折り合いが悪く、縁を切りたいと思っていた場合でも、一声はかけておくのが筋です。
生前相談での心構え
インターネットで葬儀会社を検索すると、多くの葬儀会社が生前相談を勧めています。
これは、事前に相談を承ることで、当日の依頼に繋がるためです。
葬儀会社の本音としては、生前相談なんかせずに当日を迎え、気が動転して冷静な判断が出来ない状態の遺族と打ち合わせをしたいのです。
その方が情に訴えやすく、高額商材を獲得できるからです。
では、生前相談に訪れた方に葬儀会社はどのような対応をするでしょうか?
おそらく全ての葬儀会社が、親身になって丁寧な接客を心がけ、高額な追加オプションなどは決して提示せず、見せかけだけの安い見積もりを作り上げ、肝心なところは当日に変動すると言って煙に巻きます。
大事なことは、追加オプションの一つ一つに内容を理解できるまで聞き、きちんと取捨選択して正確な見積もりを作ることです。
そして、駄目な葬儀会社を見極めることです。
駄目な葬儀会社とは、例えば祭壇に飾る生花のボリュームを聞いても正確に答えてくれない、信頼できない葬儀会社のことです。
すぐに答えられなくても、生花部に相談して縦○cm、横○cmです、と答えてくれる葬儀会社が信頼のおける葬儀会社です。
葬儀会社との打ち合わせで現物を見せてくれる葬儀会社はまずありません。
通常はカタログの写真で判断しなければならないので、細かい箇所は口答で確認し、持って帰る見積もりに注釈をつけていきましょう。
これは、言った言わないの対策にもなります。
生前相談と、当日の見積もりとで変動する箇所は、上記のように、
返礼品や食事などの、参列人数によって変動するものと、搬送距離によって変動する搬送費、ご遺体の状態や安置日数によって変動するご遺体の処置にかかる費用だけです。
それ以外は具体的な見積もりが作れます。
なるべく2社以上、そして『葬儀専門会社』『葬儀仲介業者』『協同組合』など種類の違う葬儀会社へ生前相談に行き、それぞれの見積もりを出すのがお勧めです。
個々のモラルや価値観によりますが、他社の見積もりをちらつかせて少しでも安くすることも出来るかもしれません。
そこまでしなくても既に、生前相談をしなかった方に比べて遥かに低価格の見積もりになっているはずですが。