葬儀費用は年々、減少傾向にあります。
時代の変化、価値観の変化による葬儀規模の縮小は、その理由のひとつです。
もうひとつの理由が、インターネットによる葬儀仲介業者の登場です。
葬祭業というのは、しきたりや風習により地域ごと様々な違いが生じるため、地域に密着した葬儀社が多く、全国展開する葬儀会社は数えるほどしかありません。
また、性質上、他社と比較することも難しいため、適正価格が判りにくく、価格競争が起こりにくい産業です。
ある意味、言い値で取り引きされるような業界だったわけですが、モノをインターネットで探す時代になり、それまで、近所の看板や病院からの紹介で探すことなく選ばれていた葬儀会社も、インターネットで探す時代になりました。
地元に特化した閉鎖的だった葬儀業界にインターネットという広い世界が開けたことにより、価格競争が起こるようになりました。
明朗な料金設定でインターネット上に広告を出し、自社では葬儀を執り行わず、依頼者を葬儀会社へ紹介する、葬儀仲介業者が登場します。
葬儀仲介業者とは、インターネット葬儀社や葬儀ブローカーとも呼ばれ、葬儀にかかる様々な費用を一律パッケージ化し全国均一の料金で販売、依頼が入れば、加盟している葬儀会社へ依頼者を紹介し、紹介手数料を受け取る、つまり葬儀社へ葬儀を紹介する葬儀社のことです。
葬儀仲介業者は葬儀を紹介するだけなので、式場や搬送車、霊柩車、取り仕切るスタッフなどは自社で持たず、また葬儀に関する知識も必要なく、コールセンターとインターネット上の広告を作成するプログラマー、インターネットで検索されるための葬儀マナーや葬儀に関する知識を同じくインターネット上から拾ってきて記事にするプログラマーなどで構成されています。
そのため、イオンやDMMなど畑違いの他業種からの参入も多く、価格競争は激しさを増しています。
さて、葬儀社に代わりインターネット上に広告を出して集客し、低価格の葬儀社を依頼者に代わり探してくれる葬儀仲介業者の存在は、双方にとってメリットがあるように思われますが、その実、いくつかの危険も含んでいます。
その最たるものが、葬儀費用の二極化です。
従来、町の看板や病院からの紹介で依頼を受けた地元の葬儀社は、不明瞭とはいえ、あくまで適正な価格で葬儀を執り行い利益を出していました。
そこへインターネットによる低価格での葬儀を紹介する葬儀会社が現れます。
インターネットを利用する依頼者からは依頼が入らなくなり、葬儀件数が減ります。
これでは会社が潰れる、と葬儀仲介業者に加盟し、薄利でも紹介を受け葬儀を執り行うことにします。
件数は増えましたが、以前のようには利益は出ません。
そこで、ある会社では、従来のように町の看板を見た依頼者から適正とはいえない価格で葬儀を執り行い、利益を出すようになりました。
こうして、葬儀費用の二極化は進みます。