葬儀会社の広告やHPには、「直葬10万円~」や「二日葬30万~」と大々的に掲載されています。
賢明な消費者は、広告を鵜呑みにすることはなく、まさかそんな金額でお葬式をあげられるとは思わないでしょう。
ところが、2020年の、寺院へのお布施を除いた葬儀費用の平均価格は、約184万円です。
賢明な消費者も、この差には愕然とするのではないでしょうか。
葬儀費用のうち、消費税と火葬料金は葬儀会社に支払われるものではないため、広告に掲載されていないことが多いです。
広告には消費税が含まれていない場合が多いので、30万だとすると3万円、184万円支払うとしたらその消費税額は17万円程になります。
火葬料金は、公営の火葬場で、市内料金だと1万円~2万円程、市外料金だと6万円~10万円程かかります。
これらを葬儀費用の平均価格から引いたとしても、160万円程は葬儀会社に支払うことになり、やはり、掲載されている広告とは大きく異なります。
この乖離はどうして起こるのでしょう。
多くの場合、人は病院で亡くなります。
病院で亡くなるとすぐに病院側から葬儀会社を決めるよう促されます。
病院が葬儀会社と結託しているからではありません。
病院には安置室や霊安室が少ない、或いは無い、他の患者への影響、などの病院側の理由によるためです。
つまり、事前に下調べをしていない場合、どんな葬儀会社でどんなプランがあるかなど、碌に調べることも出来ずに葬儀会社を決めなければならないのです。
葬儀会社としては釣りやすい、というわけで葬儀会社は誇大に低価格の広告を載せるのです。
そのようにして、葬儀会社が決められた後、故人様は葬儀会社の寝台車によって病院から搬送され、ご遺族は葬儀会社との打ち合わせに臨むことになります。
この時の打ち合わせで葬儀会社の営業マンから、30万円のプランが提示されることは絶対にありません。
なぜなら、打ち合わせの時点で既に故人様は葬儀会社の手によって適切な処置が施されてしまっているからです。
もし、葬儀会社の提示する見積もりを不服とし、葬儀会社の変更を希望する場合、搬送にかかった費用がキャンセル料として請求されることになります。
そして、改めて葬儀会社を選び直し、再度、搬送・打ち合わせをすることになるので、遺族への精神的負担は大きく、葬儀の日取りは遅れることになります。
30万円でお葬式があげられないからと言って、おいそれとキャンセルはしにくい状況になるわけです。
さらに、お葬式の打ち合わせは、遺族感情として費用面を抑えることに後ろめたさがあり、「安くして」や「高すぎる」と積極的に言いにくいため、営業マンの言いなりになりやすいという性質があります。
思うに、葬儀会社ほど強気に攻める営業ができる業界は他にありません。
その結果が、30万円の広告に対し160万円もの葬儀費用を葬儀会社に支払うことになるのです。
葬儀費用が高くなる要因は、上記のように、下調べをせず葬儀会社を選んでしまったことと、費用面を惜しみにくいという遺族感情にあります。
この2つを解消する唯一の策は、生前相談です。
予めいくらくらいのお葬式にしよう、と予算を決めておいた上で複数社と生前相談し、葬儀会社を決めておくこと、さらに本人とも相談し、できれば一緒に生前相談に赴くことで、葬儀会社に主導権を渡すことなく、優位に打ち合わせを進めることができます。
そして、当日を迎えた時には、参列者の人数によって返礼品や食事などに多少の増減はありますが、おおよその予算通り、本人の希望通りのお葬式をあげることができるでしょう。
因みに、2022年の、寺院へのお布施を除いた葬儀費用の平均価格は約110万円と、2020年に比べ約74万円も下落しています。
これはコロナ禍による、家族葬や直葬の増加など、葬儀規模の縮小が主な要因です。
コロナ禍は葬儀業界にも苦境を与えました。
今度の葬儀業界はコロナ禍の減益を取り戻すべく一葬儀辺りの単価を上げることに躍起になることは間違いないでしょう。
皆さんが葬儀業界のカモにならないことを願ってやみません。