玉串奉奠。
たまぐしほうてんとはこの様に書きます。
見たことのない漢字、聞き覚えのない言葉ではないでしょうか。
神道(しんとう)の葬儀である神葬祭(しんそうさい)にて行われる儀式で、参列者が行うという意味では、仏式の葬儀において行われる焼香にあたるものです。
しかし『玉串奉奠』は、神葬祭だけはなく、神式の結婚式である神前式や、七五三、お宮参り、地鎮祭など、神道の儀式でも行われます。
『玉串』とは、「榊(さかき)」の枝に「紙垂(しで)」を付けたもので、神事において重要な神前への捧げものです。
「榊」とは、下の写真のように葉の先が少し尖っているのが特徴の常緑樹で、古来より尖った枝先には神が宿るとされており、神棚に捧げられるなど、神事に用いられる植物です。
「紙垂」とは、神社の鳥居や注連縄から垂れ下がっている、特殊な断ち方、折り方をした紙で、神の力の象徴である稲妻を模して作られています。
『奉奠』とは、神様へ捧げることです。
「奠(てん)」という普段あまり馴染みのない漢字ですが、訓読みだと「奠(そな)える」や「奠(まつ)る」となり、神仏へのお供えという意味になります。
『玉串奉奠』とは、神が宿るとされる榊に神の力の象徴である紙垂をつけたもの=「玉串」を、神前へとうやうやしく捧げる儀式のことです。
また、玉串奉奠の際には、神社への参拝でお馴染みの二礼・二拍手・一礼などを行うのですが、こうした一連の儀礼を『玉串拝礼』と言います。
玉串奉奠の流れ
主に斎主(宗教者、仏式における導師)の玉串奉奠の後、喪主→遺族→親戚→一般の順に玉串奉奠を行います。
このため、式場での座席は故人様と関係の深い順になります。
自分の番が回ってきたら、席を立ち、玉串案(玉串を置く台)の前に移動し、親族席、一般席の順に正対し、一礼をします(一般の参列者は一般席に一礼をしません)。
斎主に一礼し、斎主、或いはスタッフから玉串を両手で受け取ります。
玉串は右手側に根元が来るように渡されるので、根元を右手で上から、中程を左手で下から支え、左手の方を心持ち高く持ちます。
玉串案に正対し、祭壇に向かい一礼します。
玉串の葉先が祭壇に向くよう時計回りに90度回し、根元を両手で持ち祈念します。
さらに時計回りに180度回し、根元を祭壇に向け玉串案に置きます。
二回礼をし二回拍手し一回礼をし(神社への参拝で行う二礼・二拍手・一礼)、自席に戻ります。
※葬儀での二拍手は、偲手(しのびて)と言って音を立てずに手を合わせます。
因みに、通常通り音を立てて行う拍手のことを柏手(かしわで)と言います。
上記は、一般に『神社神道』と呼ばれる神道の一形態における作法です。
玉串奉奠は、上記の神社神道の他に、天理教や金光教など神道系の宗教でも行われ、
黒住教
二礼・二拍手・一礼
天理教
二礼・四拍手・一礼・四拍手・一礼
金光教
一礼・四拍手・一礼
など、教派ごとに作法の違いがあります。
そもそも、神式のお葬式自体が全体の2%(仏式が94%)ほどと言われており、余り馴染みのないお葬式の形態であるため、開式前に斎主や式場の担当者が詳しく教えてくれます。
安心して式に臨んでください。
心構えは焼香作法と同様です。
背筋を伸ばし、ながら動作に気をつけ、しっかりと45度の礼を心がけるようにしましょう。