「天国へ行ってもお元気で」と故人様へお声をお掛けする方がいらっしゃいますが、『天国』はキリスト教の用語ですので、仏式や神式のお葬式では使いません。
キリスト教では、死は天に召される喜ばしいこととされています。
そのため、「御愁傷様です」といったお悔やみ(遺族を憂い慰めること)の言葉は使いません。
因みに、キリスト教では『召天』して『天国』へ行かれますが、仏式では『成仏』して『浄土』へ行かれますし、神式では『氏神』として家に留まり遺族の守り神になります。
『成仏』『往生』『供養』『冥福』などは、仏教の用語なので他の宗教では使いません。
しかし、同じ仏教でも浄土真宗だけは、考え方が少し異なり、『冥福』を使いません。
仏教では、49日かけて仏様になるとされているので、仏様になる前の故人様にお供えするものを『ご霊前』、仏様にお供えするものを『ご仏前』と言いますが、浄土真宗では、即身成仏(そくしんじょうぶつ)といって失くなるとすぐに仏様になられるという考えなので、『ご仏前』と言います。
と、ここまで宗教による忌み言葉をお伝えしましたが、実際にはあまり気にされなくて良いです。
急な訃報で駆けつける、或いは弔電を送る際に、宗派を気にかける余裕のない方がほとんどですし、日本は殊の外、宗教に寛容なので。
お坊さんでも、クリスマスにはツリーを飾ってプレゼントを送る方もいらっしゃるくらいですから。
例えば、神道の方でも故人様へは仏教の合掌のように手を合わせてご挨拶をされる方が多くおられます。
日本人には食事の前や、何か頼みごとをするときなど、手を合わせる習慣が根強く残っているのでしょう
参列者は気にされなくても良いのですが、葬儀会社のスタッフは大変気にします。
やはり、参列者の中には敬虔な信者の方がおられることもあるので、神式やキリスト教式のお葬式では、絶対に手を合わせません。
その方が無難だからです。
浄土真宗のお葬式で読み上げる弔電に『ご冥福をお祈りします』とあった場合、そこまで気にされるご住職はなかなかいらっしゃらないので普通に読み上げますが、『天国でもお元気で』と書かれていた時には、さすがにご住職に確認に行きます。
中にはご冥福すら許さない強情なご住職もおられます。
おそらく全ての地域に根差した地元の葬儀屋さんには、その地域に存在する要注意寺院を集めたリストが必ずあり、対処法などの共有が行われているはずです。
葬儀会社は宗教者とも上手く付き合っていかないといけないのです。