線香の作法

朝晩の挨拶のように仏壇に手を合わせ、線香を上げる。

そうした父や母、祖父母の姿を、普段、または帰省の折りに何気ない日常の風景として目に触れたことがあるのではないでしょうか。

そんな線香の、由来や意味、宗派による違いをお伝えします。

線香の由来

主にお仏壇やお墓へお供えとして焚く『線香』ですが、細い棒状である現在の形になったのは、16世紀の中国と言われています。

日本では、16世紀末、天正年間には現在の大阪府堺市で製造が始まったそうです。

当時の線香は非常に高価で、公家達の贈答用品として用いられていました。

現在でも堺市の線香は高級線香として知られており、300年以上続く線香商があることでも有名です。

線香が一般庶民に浸透し、現在のように使われ始めたのは江戸時代に入ってからのことと言われています。

また、江戸時代には、線香は時計代わりとしても使われていたようです。

坐禅を一回することを『一炷(いっちゅう)』と言い、線香一本が燃え尽きる時間のことで、30分から45分ほどです。

花街では一回の遊びの時間を線香で測ったことから、芸妓に支払う代金、花代のことを『線香代』と呼んでいたそうです。

線香の意味

線香の香には線香を上げるご自身やその空間を清らかにする、という意味があります。

また、線香には故人様や仏様へ香をお供えする、という意味があります。

そして、線香の煙にはこの世とあの世を繋ぐかけ橋になる、という意味があります。

つまり、線香にはお供えという意味だけでなく、線香をあげることで、その場や自分自身が清められ、故人様や仏様との繋がりがより深くなるのです。

そうして、故人様や仏様に向かって手を合わせ、挨拶や対話を行います。

線香作法

線香をあげる基本的な流れは、以下のようになります。

数珠は左手に持ち、仏壇の正面に向かって正座し、一礼します。

マッチやライターでろうそくに火をつけ、ろうそくから線香へ火を移します。

線香に火がついたら、手であおぐか線香を縦に振って火を消し、線香立てに立てます(宗派によっては寝かせます)。

(※おりんを鳴らしてから)、手を合わせ一礼します。

ろうそくの火を手であおいで消し再度一礼します。

以上です。

※おりんは、弱く1回、強く1回、の2回鳴らすのが一般的ですが、鳴らし方や回数は、宗派や寺院により様々です。

そして、おりんは必ず鳴らすものではありません。

浄土宗や浄土真宗はお経の時に鳴らすものとして、仏壇に手を合わせるときには鳴らさない、とする考え方もあります。

菩提寺など、付き合いのある寺院があれば、直接聞いてみるのがよいです。

また、宗派により、線香の立て方などが異なります。

天台宗・真言宗…

3本に火をつけ、こちらから見て手前に1本、奥に2本、逆三角形になるように立てます

臨済宗・曹洞宗…

1本に火をつけ真ん中に立てます

日蓮宗…

1本に火をつけ真ん中に立てるor

3本に火をつけ、こちらから見て手前に1本、奥に2本、逆三角形になるように立てます

浄土宗…決まりなし

浄土真宗…

一本を半分に折り火をつけ、こちらから見て左側に点火部分が来るように寝かせます

弔問などでよそのお宅へお参りする際のおりんや線香の作法ですが、弔問先の信仰する宗派や作法がわからなければ、おりんは鳴らさず、線香は真ん中に一本立てておけば問題ないです。

線香は1日のうち何回、いつあげる、とい

う決まりは特にありません。

いつでも、何回でもあげて構いませんが、線香は故人様への挨拶であり対話なので、あまりしつこくすると、もしかしたら故人様も愛想を尽かせてしまうかもしれません。

回数は少なく、その一回に心を込めて行うのが良いように思います。