焼香の作法

焼香の意味

『焼香』とは、故人様や仏様に向かい香を焚いて拝む事です。

仏教では、「香」「花」「灯明」「水」「飲食」の五つを五供(ごくう)と言ってお供え物の基本とされています。

そのうちの一つである「香」は、仏様が召し上がるものとしてお供えし、供香(ぐこう)と言います。

主にお墓やお仏壇に向かう際には線香を焚き(線香焼香)、仏式の葬儀や法要の際には抹香を焚きます(抹香焼香)。

今日では、抹香焼香のみを『焼香』と言い線香焼香と区別されているので、この記事でも線香焼香のことを『線香』、抹香焼香のことを『焼香』と表記します。

線香の香は30分以上持ちますが、焼香は持って1分ほどなので、ご自宅やお墓でのお供えには向かず、線香は焼香に比べ火をつけるのに少し時間がかかるので、多数の参列がある葬儀や法要には向きません。

線香と焼香は、上記のように使い分けがされているので、以外に思われるかもしれませんが、香をお供えするという意味合いにおいては同じ事なのです。

焼香の流れ

宗派や参列者の人数によりますが、概ね開式から15分~20分後に、司会者より案内があり遺族焼香が始まります。

喪主様から、故人様と関係の深い順に遺族→親戚→一般と焼香は進んでいきます。

このため、式場での座席は故人様と関係の深い順になります。

自分の番が回ってきたら、席を立ち、座っていた場所により、焼香台の右、或いは左へ移動し、導師(お経を唱えてくださる宗教者)に一礼をします。

焼香台の前、焼香をする位置より一歩後ろに立ち、親族席、一般席の順に正対し、一礼をします(一般の参列者は一般席に一礼をしません)。

正面祭壇に一礼し、一歩前へ出て焼香をします。

焼香は、回数や、押しいただく・押しいただかない、など宗派により様々ですが、左手に数珠を持ち、右手の親指・人差し指・中指の3本で抹香を持ち、押しいただく場合は少し頭を垂れ、左手を右手の下に添え、目線の高さより上まであげます。

焼香を終えた後は合掌(数珠の持ち方も宗派により異なります)をし、手を合わせたまま一礼をします。

再び一歩下がった後、再度一礼をし、親族席、一般席の順に正対、一礼し、席に戻ります。

と、ここまで書きましたが、この通りにする必要はないです。

コンビニサイズの小さな家族葬ホールなどでは、移動できるスペースが限られていたり、参列が多い式だと二人以上で同時に焼香することもあり、上記の通りに動けない場合もあります。

焼香で大事なのは故人様へ香をお供えする気持ち、この一点に尽きます。

家族葬が増え、葬儀や法要へ参列する機会が少なくなった昨今、付け焼き刃で焼香作法を覚え次の動作を考えながら散漫に焼香をするのでは本末転倒であるように思います。

また、深い悲しみの中では動作まで気を配る余裕がない方もおられると思います。

織田信長のように抹香を投げつけるような常軌を逸した行動さえしなければ、動作は前の人と同じように行えば問題ありません。

とは言え、参列者の視線も感じるでしょうし、きちんとした動作をとりたい方もおられると思います。

少しの意識で簡単にできる三つのポイントをお伝えします。

一つは、普段より気持ち背筋を伸ばし姿勢を正すこと。

もう一つは、ながら動作に気をつけ、一つ一つの動作に区切りをつけること。

最後に、一礼は最敬礼(45°)

この三つの意識で焼香作法はより良いものになります。

宗派ごとの焼香作法

宗派ごとに、焼香回数や押しいただく、押しいただかないの違いがあり、それぞれに理由や謂れがあります。

天台宗…決まりなし

真言宗…3回

臨済宗…1回

曹洞宗…2回(2回目は押しいただかない)

浄土宗…決まりなし

浄土真宗…押しいただかない

・本願寺派…1回

・大谷派… 2回

・高田派… 3回

日蓮宗…導師は3回、参列者は1回or3回

日蓮正宗…3回

ですが、葬儀の現場において、導師も含め作法を気にされる方はほとんどおられません。

参列者が多い場合などには全員、一回焼香をお願いすることがあります。

気にしているのはマナー講師くらいのものです。

また覚える必要もないですし、知りたければ当日の式担当者に聞いてみると良いでしょう。

何度も記しますが、大事なことは気持ちだと思います。