喪中と忌中

服喪中は新年の挨拶を控えたり、49日を過ぎるまでは飲み会への参加は控えるべき、というのは一般常識として広く浸透しています。

1947年まで、日本には服忌令(ぶっきりょう)という法律がありました。

服忌令とは、故人との関係性により喪や忌の期間を定めていた法令で、1684年、江戸幕府5代将軍、徳川綱吉が発令したものです。

服忌令には、父・母・夫は13か月、妻・嫡子・兄弟姉妹は90日などの服喪期間と、父・母は50日、夫は30日、妻・嫡子は20日などの忌の期間が定められていました。

生類憐みの令は、1709年、綱吉が亡くなった年に廃止されましたが、服忌令は、その後も幾度の改定を重ねながら明治新政府に引き継がれ1947年(昭和22年)に廃止されるまで約260年もの間、日本の法律として国民に広く浸透してきました。

また更に時代は遡り奈良時代、大宝律令に続く律令として日本で二番目に施行された法令である養老律令には服紀条という条文があり、父・母・夫は1年、祖父母は5か月などと、服喪の期間が定められていました。

現在では喪中や忌中を定める法律はありませんが、一般的にその範囲は2親等以内、喪中期間は13か月、その内、仏式であれば49日、神式であれば50日が忌中期間とされています。

喪中とは、喪に服す期間、故人の死を悼み身を慎む期間です。

『悼む(いたむ)』とは、悲しみ嘆くこと。

つまり、故人の死を悲しみ、お祝い事、娯楽や派手なことは控えましょう、という期間が喪中です。

具体的には、

・正月祝い、結婚祝い、成人祝い、誕生祝いなどのお祝い事を控える

・新年会、忘年会、歓迎会などの宴会を控える

・旅行、家の新築、などを控える

等々です。

が、上記のように、現在では、絶対にしてはいけない、という定めはありませんので、各個人や各家庭の判断に任せられています。

しかし、周囲の人の中には気にされる方もいらっしゃるかもしれません。

非常識な奴だ、と謗られる可能性もありますので、十分に相談するか、やはり控えるほうが良いように思います。

忌中の間は神事を控えるべきとされています。

忌中の『忌』とは忌む(いむ)、つまり穢れ(けがれ)を避けることで、これは日本に古来より伝わる神道の考えによるものです。

神道では、死や血は避けるべき不吉な事象であり、触れると不吉が伝染すると信じられていました。

この観念を『穢れ』と言います。

穢れという観念のために、葬儀参列者は身体に塩を撒いて穢れを清め、遺族は回りに穢れをうつさない為に自宅の玄関に忌中札を貼って目印にします。

自宅に神棚があれば、半紙を貼って神棚封じをするのですが、その際、遺族はすでに死に直面して穢れているとされるので、遺族や親族以外の第三者(友人や葬儀会社の人)に封じてもらいます。

上記の理由により、忌中の間は神社への参拝を控えます。

『①近親者が失くなってから一年間(喪中の間)は、②鳥居をくぐらなければ、③初詣に行っても良い』

は全て間違いです。

①神道では50日を経て穢れが落ち、故人は家庭を守る祖先神になるとされていますので、50日を過ぎれば神棚封じを解きますし、神社へ参拝しても良いとされています。

この期間を忌中と言います。

近親者が失くなってから50日が経過していれば、初詣に行っても良いのです。

②鳥居は神域の入り口です。

忌中は神域へ穢れを持ち込んではいけない、と言うのが神道の考えです。

鳥居をくぐる=神社へ参拝の比喩的表現なのですが、鳥居をくぐらなければ神社への参拝OKと頓知のような解釈をしたのだと思われます。

③初詣だけが駄目なのではなく、神社への参拝が駄目なので、合格祈願や七五三、お宮参りなどもNGですし、お祭りへの参加や地鎮祭も行えません。

神社への参拝はNGですが、寺院への参拝は全く問題ありません。

仏教には死は穢れという教えはないためです。

そして、初詣も合格祈願も七五三もお宮参りも、神社で行う祈祷や祈願は寺院でも行えます。地鎮祭も仏式で行えるそうです。

因みに、日本では神仏習合と言って神と仏は一体、という考えがあるため、天照大神=大日如来のように、符合する神仏や寺社があります。

同じご利益の寺院を探して参拝に行かれるのも一興であるように思います。